久しぶりに舘正規氏に会いに行ってきました。
現在舘氏は非常に多忙を極めているにもかかわらず無理を言って、時間を作って頂きました。
舘氏のいる三重県四日市市は伊勢湾に面していることから、温かいイメージがあったのですが、現実は滋賀県の伊吹山で冷やされた伊吹降ろしにより実に寒い土地でした。
寒さのためか、舘氏はサムイを着て仕事をされており、夏お会いしたときの半袖半ズボン姿と比べると強烈に作家らしいいでたちでした。
舘氏はとても強面ですが、性格は極めて明るく、話しているとまるで漫才師の話を聞いているかと思うほど面白い方です。私はそのような柔軟で優しい舘氏の性格は急須作りに於いて重要な要素だと思います。
作家の性格というのは概して作品に現れる物です。舘氏の急須は繊細で全体に優しさがあり一つ一つがオーラを発しております。
因みに、急須の「オーラ」とは何なのでしょう?・・・と舘氏に聞いたところ、面白い解答を戴きました。
舘氏曰く、「丸い急須を思い浮かべて下さいと言った場合、人それぞれが異なる丸を思い浮かべます。同じ丸でも人によってイメージする丸は異なります。急須があなたのイメージする丸に極めて近い形だったとき、あなたは急須に極めて強い親近感を感じるのですよ」と言うことだそうです。
舘氏は芸術を追究するのではなく、使う人が喜ぶ急須を自分の興味のある技法で作っています。
私が思う最高に美しい急須とは、「機能美」或いは別の言葉で表現するなら「用と美」ではないかと思います。
機能を追求して作られた急須は美しく見ていても飽きません。
ところで、今回私は窯変という技術に関しとても詳しく教えて頂きました。
窯変とは、「焼きの芸術」です。焼き方により急須の表面に色の変化を与える技法の一つです。
急須をそのまま窯で焼いたら全ての色は均一となります。通常の萬古の急須はこのように作られます。
それに対し、窯変とは、急須を耐熱性の高い陶器に入れ、蓋を9割ほど被せることで、急須を蒸し焼きにします。
その際、急須に接するように籾殻や、その他秘密の材料を詰め込むことで、様々な炎が生じ、急須表面に色のグラデーションを作り出すのです。秘密の材料に関しても教えて頂だきましたが、舘氏の技法なので残念ながら公開できません。材料に対するこだわりを聞いて吃驚しました。
更に、高度な技術となると、部分的に陶器の表面を溶かす、銀色を発色する等、まさに焼きの芸術と言えます。
因みに舘氏の窯変急須は赤・黒・銀色に発色しております。銀色があまりにきれいなため私はてっきり釉薬を塗っているのかと勘違いしていたほどです。
窯変は意図的に作れる物ではなく、時として偶然が織りなす芸術でもあります。窯変急須の作成時には失敗がとても多く、思うような色が出ず、割ってしまうことは日常茶飯事だそうです。
素晴らしい作品が完成しても、その次に製作を行った場合、類似品は出来ても同じ急須は2度と作れません。
その点で、窯変の急須は所有する喜びを与えてくれます。正しく世界に一つしかない作品なのです。

陶芸家の舘正規氏:怖そうに見えますが、とても話好きで柔らかい性格の方です。

舘氏の窯変急須:手元に急須が無く、良い写真が見つかりませんでした。写真の急須は発色を良くするため、一般的な紫泥ではなく、古萬古風の白黄色い土を使用しております。左側が銀色に光っているのが見えますでしょうか?実物は本当に議員色にキラキラと光っております。