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ダージリンティのあまり知られていない話しを徐々に公開していきたいと思います。これら情報が得られたのも、優秀なエステートマネージャーの邸宅に泊めて頂き、彼に手取り足取り教えてもらった御陰です。マネージャーには本当に感謝しております。
ダージリンティーには春摘みのファーストフラッシュ、夏摘みのセカンドフラッシュ、秋摘みのオータムナルの3種類があります。フラッシュとは英語でFlush=芽の意味です。
ダージリンの春摘み茶はとても緑色をしております。それに対し、夏摘み茶になると、黄色っぽい褐色になり、秋摘み茶の場合茶色というのが一般的なイメージです。
何故同じ産地で採れたお茶なのに、こうも色が違うのでしょう?私がこれまで読んだ本、聞いていた話は、「春の芽は新鮮だから緑色」と言った非常に意味のない内容でした。
今回良く理解したのですが、これらの差は工場により意図的に作られております。つまり、夏摘み茶も、春摘み茶のように緑色にすることが出来るし、逆に春摘み茶をオータムナルのように茶色に加工することも可能です。
これらの3シーズンの品質の差は何により作られているかというと、萎凋と呼ばれるプロセスです。萎凋とはこれまでも何度も説明してきましたが、収穫後のお茶を萎れされる工程です。
萎凋は真っ暗な部屋で行われます。左側の空の漕の底面にご注目下さい。この上に茶葉が敷き詰められるのですが、送風機のスイッチを入れると、上に向かって風邪が吹き上がります。
 萎凋の初期段階
萎凋が進むと、写真のように萎れて、色も徐々に変わってきます。それだけではありません。部屋一面に花のような香りが充満するのです。
この萎凋工程ですが、ダージリンのティー工場で最も大切な工程と言われており、萎凋が上手くいけば70%の品質は決まったも同然と言われるほどです。工場の中でも萎凋工程を管理する人は最も重要な技術者で、将来の工場長候補です。
紅茶の萎凋は、萎凋漕と呼ばれる金属製のボックスの底面に茶葉が薄く並べられます。底面には多孔板で出来ており、沢山の穴が開いております。
萎凋漕へは強力な送風機で空気が吹き込まれるようになっており、底面に並べられた茶葉は下から空気を吹き付けられます。
萎凋とは空気を連続的に吹き付けることで、人工的に茶葉を萎れさせる工程です。この工程は烏龍茶・紅茶、一部の緑茶に共通しておりますが、花のような香りのするお茶はみな萎凋が行われていると考えて良いでしょう。
萎凋を行うことで、成分が分解し、うっとりするような香りが作られます。また、ポリフェノールに含まれる糖が加水分解され遊離することから甘みが飛躍的に増加します。
 揉捻装置です。下のトレイが回転します。上からかける圧力の強弱を調節することで揉み具合の調整を行います。
揉み終わった茶葉です。ご覧の通り、半分は緑色をしております。=半発酵
普通の紅茶の場合、萎凋後の水分は50%前後となります。その後、揉捻により細胞が破壊されることで発酵が開始され、紅茶特有の茶色に褐変するのです。
ところか・・・・・ダージリンティーの場合、萎凋の程度が他の紅茶とはかなり異なります。萎凋はとても長く24時間以上行われ、また、ダージリンティは高山で収穫されるために元々も茶葉の水分も比較的少なく、萎凋後の水分はたったの30%になってしまいます。
30%しか水分を含まない茶葉は、その後の揉捻工程で細胞を破壊しても、あまり酸化が進まないのです。言い換えると、酸化発酵には水分が必要です。リンゴを切ったときに直ぐ茶色くなる現象もお茶と全く同じ酸化発酵です。萎びたリンゴの場合、新鮮なリンゴほど茶色くなりません。このことからも言えるように、酸化酵素が活性化するためには十分な水分が必要なのです。
十分な水分がないままに次工程に送られた茶葉は不十分な発酵をします。言い換えると、半発酵なわけです。つまり、ダージリンティは紅茶ではなく烏龍茶なのです。
私は以前からダージリンティーは烏龍茶だと思っておりました。茶殻を見れば一目瞭然ですが、緑と赤色が斑点になっており、どう見ても烏龍茶なのです。
私がダージリンは烏龍茶という意見に対し、インドカルカッタのお茶商人は猛反対し「ふざけるな」と言わんばかりの態度でした。インドのお茶商人の殆どは実際にお茶の知識はありません。インドのお茶しか見たことがなく、また、彼らのテースティング能力及びお茶の加工に関する知識にはかなり疑問を感じます。
ところが、同じ意見を、茶園を統括するエステートマネージャーにいたところ、「勿論、ダージリンティイーは烏龍茶ですよ」と言われました。あまりにあっけなく、ダージリンティー烏龍茶説が認められてしまいました。その後数人のマネージャーと会ったのですが、皆同じ事を言います。ダージリンティは紅茶として知られておりますが、お茶の加工の視点から分類からすると、烏龍茶と同じ、半発酵茶なのです。
春摘み、夏摘み、オータムナルに顕著な色やや味の違いがある理由は、萎凋の程度及び発酵時間を意図的に変えているからだそうです。何故、春摘み茶は緑色かというと、マーケットがそれを求めているからだそうです。逆にマーケットのトレンドが変わった場合、異なる加工法をすると言っておりました。
茶葉は同じ茶園でも木により、時期により、また、生育場所により水分が全く異なります。これらの特性を正確に見極め、茶葉に適した萎凋を行うことが良いダージリンティーを作り出すポイントなのです。
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