今日ある出来事がありました。
実は、私の顧客の一人で、高級な急須をいつも買って下さるお客さん(中華系)がおります。
丁度、朱泥急須の味への影響を他の客さんに見せていたところ、彼が店にやってきました。
彼にも試飲に参加して貰い、無名異焼を用いることで朱泥が優れている点を理解して貰いました。
実は、彼は、常滑焼:杉江木仙による朱泥急須セットを買いたくて店に来たのでした。
木仙と言えば昭和を代表する常滑の名工、大正5年生まれで轆轤を使わない朱泥の型押し・手ひねり技法で知られた達人です。
木仙氏は常滑の人間国宝である3代目山田常山と同世代で、昔ながらの材料・技法を大切にしていた作家の一人です。
通常、A級の作家の茶器セット(桐箱入り)ともなると、最低ラインが10万円です。木仙氏の場合、既に他界しているため、当然、更に高い値段が付きます。
ただ、この茶器セットを買うにあたり、お客さんは、常滑朱泥と佐渡無名異朱泥の差が知りたいと言いました。私も昔の本格的な常滑朱泥を試したことがなかったので、具体的なお茶への影響を説明することが出来ませんでした。日本では見た目で買われる急須ですが、中国やアジアではその性能を重視する傾向があります。今回も、テストをして朱泥の効果を評価することにしました。
早速、無名異焼と木仙の常滑朱泥をそれぞれ比較しました。
どちらも同じように加熱し、一番分かり易い、高山烏龍茶を全く同条件下にて淹れてみました。
結果
最初に常滑木仙氏の急須で淹れたお茶を飲みました。
その瞬間、「あ!」と思いました。
明らかに温度が低いのです。
無名異焼で淹れた温度に慣れてしまっている私にとって、口にお茶を近づけただけで差に気がつきました。無名異でいれたお茶の温度は高く、香りが強く感じられ、その差は明確でした。
日本を代表する朱泥と言えば、常滑の朱泥と言われており、常滑の朱泥は宜興の朱泥を模倣することで、杉江寿門氏によりその作り方が開発されたと言われております。以前に寿門氏の制作した急須を持ったことがありますが、ずしりと重く、かなり良い土が使われていることが推察されました。
ただ、当時の良い土はもう無くなってしまったのでしょうか?とても興味深いテーマです。
私は今、山田常山窯の急須に最後の期待をしております。
人間国宝の3代目山田常山氏は自分で掘り起こした土を、昔ながらの作り方で精製・熟成し使っており、その土は自分の孫の代まで残してあると聞いたことがあります。
早速、3代目山田常山の孫にあたる、山田想氏の朱泥急須を取り寄せ、実験してみたいと考えております。

杉江木仙氏の茶器セット

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